映画『はじまりのうた』  原題:『BEGIN AGAIN』

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監督はジョン・カーニー、主演はキーラ・ナイトレイマーク・ラファロ

タイトルからもわかる通り、この映画は歌をテーマとしているが、その作中歌がとにかく素晴らしく見える作品。

家族とギクシャクし仕事も奪われた音楽プロデューサーであるダンと、大物ミュージシャンの恋人に浮気され自暴自棄になっていたグレタが出会ったことで、物語は動き出す。

ダンのアイディアでグレタの作っていた曲を、ニューヨークの街中でレコーディングし、レーベルに持ち込もうと奮闘する。

この映画の見どころの一つは、このレコーディングのシーンにある。ダンの娘がその現場に参加することになるのだが、ついでにとダン自身も参加することになる。曲を演奏する中で、互いへの理解を深めていく様は、見ていて心温まり、言葉で言い表す以上の感情を魅せてくれる。

さらに、グレタの恋人デイヴ役であるアダム・レヴィーンにも注目だ。彼は有名バンドマルーン5のボーカルであり、今作中でもその歌声を存分に聞かせてくれている。

私が最も好きなシーンは、映画終盤で彼のコンサートにグレタが呼ばれてきたシーンである。彼は、グレタとともに作った思い出の歌を、バラードから大衆向けのポップスに変えて歌っていた。もちろんグレタは気に食わない。

レコーディングも一段落したところで、彼からライブへのお誘いメッセージが届く。会場に足を運ぶグレタ。ステージ上にはデイヴがいる。そして、「この曲は大切な人と作った。ステージにはギターも用意してある。もしその人が良ければ、上がってきて一緒に歌ってほしい」と話し、思い出の歌「Lost Stars」を本来の形で歌う。

観客は大興奮。グレタも感極まり涙を流す。デイヴもグレタに合図をするが、彼女は壇上には登らず、夜の街中へと帰っていく。この選択に感動した!

ここからは個人の考察だが、彼女は愛情よりも自分の信念を選んだのだろう。作中、ダンに「そんな男の子みたいな恰好はやめろ」と言われ、「外見や印象で判断されるのが音楽じゃない。本物になりたいの」とグレタは語った。

ここでデイヴと仲直りすれば、二人で仲良く暮らし、自身の曲もデイヴの宣伝効果で売れるだろう。しかし、彼女はそれを良しとしなかった。あくまでも自分の考える本物になりたいとおもったからこその選択である。

彼女は最後にダンのもとに尋ね、楽曲のアルバムを1ドルでネット限定販売することにする。結果は大うけ。自分の信念を貫き通しても成功することをグレタは証明して見せたのだ。

この映画を見て、すぐにサントラを探しに行った。ただ曲を聴くだけではありえない愛着を、この映画の曲にはもってしまったようだ。

しかし、このサントラが1ドルでないのは皮肉なものである。

 

はじまりのうた-オリジナル・サウンドトラック

はじまりのうた-オリジナル・サウンドトラック